
築50年の一戸建てなど古い物件の売却には、再建築の可否や節税対策、そして売却方法の選択など、押さえておくべき重要なポイントがいくつもあります。
本記事では、築50年の一戸建てを売却する際に知っておきたい成功のコツや注意点、節税につながる特例など、役立つ情報を詳しく解説します。
目次
築50年の一戸建ての売却相場
古い一戸建てを売却する際には、まず相場の理解が必要です。
不動産の価値は、一般的に築年数が経つにつれて下がる傾向があり、築50年の一戸建ての場合、以下の2つのポイントを押さえておきましょう。
建物の価値がゼロと見なされることが多い
築50年にもなる一戸建て住宅は、建物そのものの価値がほぼないものとして扱われます。
そのため、売却時には土地の価値が査定の基準となります。木造一戸建て住宅は、新築から年々価値が下がり、築20年を超えるとほとんど価値がないとされます。
築年数 | 建物の価値 |
---|---|
新築 | 100% |
10年 | 50% |
20年 | ほぼ0% |
50年 | 0% |
築20年を超えた住宅が価値を失う理由は、建物の劣化が目立ち始めるだけでなく、住宅の耐用年数が関係しているからです。
耐用年数とは、住宅に資産価値があるとされる期間を指し、木造一戸建ての場合、法定耐用年数は22年と定められています。
築50年の住宅は、法定耐用年数を大幅に超えているため、建物の価値がないと見なされます。
状態が良好であれば価値が認められることもある
築50年の一戸建てでも、状態や条件が良ければ建物に価値が認められる場合があります。
最近ではリノベーションされた古い家を購入する人も増えており、築年数だけでなく、部屋の状態を重視する方が多いです。
たとえば、築年数が経過していても、水回りや内装が良好で、購入後すぐに大規模な修理が必要ない場合などが挙げられます。
物件の状態によって判断は異なるため、築年数だけで判断せず、不動産会社に相談して正確な価格を確認することが大切です。
さらに、築古物件を所有している方には、築40年の一戸建ての売却相場も参考になるでしょう。
不動産の価値は地域の需要やその他の要因によっても変動するため、正確な価値を把握するには、専門家の査定が必要です。
築50年の一戸建てを売却する方法
築50年の一戸建てを売却する際には、以下の5つの方法があります。
現状の建物を維持して売却する
古い家をそのまま売り出すのではなく、「古家付き土地」として売却する方法もあります。これは、古い建物が残っている状態の土地を意味します。
築50年以上の一戸建ては建物に価値がないと見なされ通常の一戸建てとして売却するのは困難ですが、土地として売却すれば買い手を見つけやすくなります。
また、古家付き土地として売却すれば解体費用がかからないため、売却価格が低くなることはありますが、売主の負担を減らせるという大きなメリットがあります。
建物を解体し、更地にして売却する
建物を取り壊して、更地にした状態で売却する方法も一つの選択肢です。
物件が住むのに適さない場合、土地として売り出すことで買い手が見つかりやすくなり、買い手にとっても解体の手間を省き新しい家をすぐ建てられるという利点があります。
ただし、更地にする際のデメリットとして、解体費用が発生します。
木造一戸建ての場合、解体費用の相場は1坪あたり3万〜5万円であり、敷地面積によっては、高額な費用がかかる可能性があります。
解体費用を考慮すると、古家付き土地として売却した方が有利な場合もあるため、更地にするかどうかは、不動産会社と相談しながら判断するのが良いでしょう。
リフォームやリノベーションを施して売却する
築古物件の売却時には、リフォームやリノベーションを行い、即入居可能な状態にして売る方法もあります。
ただし、改修にかかった費用をそのまま売却価格に反映できるわけではない点に注意が必要です。
さらに、リフォームやリノベーションを前提に物件を探している購入者も増えています。
彼らの目的は、安く物件を購入し、自分の好みに応じて改修することなので、改修がかえって売却の妨げになる可能性もあることを考慮しましょう。
不動産会社に直接買い取ってもらう
不動産を仲介ではなく、直接不動産会社に買い取ってもらう「不動産買取」という方法もあります。
この方法のメリットは、買い手を探す必要がないため短期間で売却が可能なことや、内覧対応などの手間が省けることです。
しかし、不動産買取の場合、売却価格は仲介で売却する場合と比べて相場の7割程度に下がることが多いというデメリットもあります。
これは、不動産会社が購入後にリフォームやリノベーションを行い、再度市場で売却して利益を得るために、安く仕入れる必要があるためです。
早く売却を終わらせたい方には適した方法ですが、最終的な利益を考慮した上で検討することが重要です。
空き家バンクを活用して売却する
できるだけ費用を抑えて売却したい方には、空き家バンクを利用する方法があります。
空き家バンクは、空き家を所有する人と購入したい、または住みたいと考えている人を結びつけるサービスです。
このサービスを利用すれば、物件の掲載費用や広告費用がかからず、買い手を無料で見つけることが可能です。
ただし、空き家バンクは自治体が運営しているため、全国にあるわけではありません。
所有する物件のある地域で空き家バンクが利用できるかを事前に確認することが必要です。
一戸建てを売却したときに適用される特例
一戸建ての売却利益は「譲渡所得」として課税対象ですが、特例を利用すれば非課税になる場合があり、本記事では3つの特別控除を解説します。
3,000万円の特別控除の特例
マイホームを売却した際、一定の条件を満たせば、最大3,000万円の譲渡所得特別控除を受けられます。
売却利益が3,000万円以下の場合、その全額が控除され、非課税となります。
マイホーム売却時の譲渡損失に対する損益通算および繰越控除制度
マイホームを売却して損失が出た場合、その損失を他の所得(給与所得や事業所得など)と相殺(損益通算)できます。
さらに、相殺後も損失が残る場合には、その損失を翌年以降に繰り越して控除することが可能です。
ただし、「3,000万円の特別控除の特例」との併用はできず、前年または前々年に特例を受けた場合も利用できません。
空き家の3,000万円特別控除
相続した空き家を売却した場合に最大3,000万円の特別控除を受けられる制度です。
ただし、対象となるためには、建築年、登記、相続開始前の居住状況などで一定の要件を満たす必要があります。
これらの特例を適用することで節税が可能ですが、詳細な条件や適用方法については、不動産会社に相談することをお勧めします。
築50年の一戸建てを成功させるための売却の秘訣
築50年の一戸建てをうまく売却するためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
土地の境界を明確にする
一戸建てを売却する際には、土地の境界をはっきりさせることが重要なため、売却する際には、境界確認書や土地測量図を準備する必要があります。
特に、古い一戸建ての場合、境界が曖昧なままになっているケースが多く、境界線の不明確さは土地の面積に影響を与えるため、売却前に明確にしておくべきです。
境界線を確定するためには、専門の測量会社に依頼することが一般的です。
測量には時間がかかる場合もあるため、売却を検討している段階で早めに測量を依頼することをおすすめします。
内覧時には物件の状態を正確に伝える
内覧の際には、家の状態を正確に買い手に伝えることが非常に重要です。
不動産売却でよく起こるトラブルの一つに、引き渡し後の不具合があります。
例えば、居住にあたって問題となるような劣化や汚れを説明せずに売却したり、買い手からの質問に対して不明瞭な返答をするなどの誠実さに欠ける対応が原因です。
こうした対応は、買い手に不信感を与え、購入意欲を大きく下げてしまう可能性があります。
内覧時には、買い手が安心して購入を検討できるように、たとえマイナスの情報であっても正直に伝えることが大切です。
自分で売却相場を調べる
不動産査定を依頼する前に、売却相場を自分で調べる方法は主に2つあります。
- レインズ・マーケット・インフォメーション
- 不動産情報ライブラリ
レインズ・マーケット・インフォメーション
レインズ・マーケット・インフォメーションは、不動産流通機構が運営するサービスで、過去の売買実績をもとに売却価格を算出できるのが特徴です。
さらに、過去2年間の不動産市場の動きを示すグラフデータも公開されており、物件の価格推移を確認する際に役立ちます。
不動産情報ライブラリ
不動産情報ライブラリは、不動産の取引価格や地価公示などの価格情報、防災情報、都市計画情報、周辺施設情報など、不動産に関するさまざまな情報を提供する国土交通省のWEBサイトです。
これを利用することで、実際に成約した取引価格を確認でき、より精度の高い調査が行えます。
どちらも簡単な情報入力で売却相場を調べることができるため、自分で相場を把握する際にはおすすめのツールです。
築年数が古い物件の売却に強い不動産会社を見つける
築50年の一戸建てを売却する際には、古い物件の売却に強い不動産会社を選ぶことが重要です。
不動産会社にはそれぞれ得意とする分野があり、たとえば一戸建ての販売に特化した会社や、築浅物件や都心の高級マンションの売却に強い会社など、多様です。
築年数が古い一戸建てを売却したいのに、マンション売却に強い不動産会社に依頼してしまうと、効果的な広告活動ができず、買い手が見つからない可能性があります。
その結果、売却に失敗するリスクもあります。
「古い物件の売却に強い」不動産会社を探すことが重要です。各不動産会社の強みやアピールポイントは、ホームページで確認できることが多いため、査定を依頼する前に必ずチェックしましょう。
複数の不動産会社に査定を依頼する
不動産会社を選ぶ際には、複数の会社に査定を依頼してから決定することが重要です。
不動産会社ごとに査定基準が異なるため、すべての会社で同じ査定結果が出るとは限りません。
1社のみに査定を依頼して決めてしまうと、その査定額が適正かどうかや、その会社に任せるべきかの判断が難しくなります。
また、不動産会社ごとに得意とするエリアや物件の種類が異なるほか、担当者との相性も考慮する必要があります。
そのため、複数の会社に査定を依頼し、査定結果やその理由、営業担当者との相性などを総合的に比較して選ぶことが重要です。
しかし、不動産会社の数は非常に多いため、初めて不動産を売却する方が1社ずつ探してやり取りするのはかなり手間がかかります。
そこで役立つのが、一括査定サイトです。
売却予定の住宅の所在地や土地の大きさなどの簡単な情報を入力するだけで、複数社の適切な不動産会社を提案してくれます。
中古物件の売却に強い不動産会社を探すのが難しいと感じている方は、一括査定サイトをぜひ活用してみてください。
築50年の一戸建てを売却する際に気をつけるべきポイント
築50年の一戸建てを売却する際には、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
再建築可能な物件かを確認する
古い家を売却する際には、その土地が再建築可能かどうかを確認することが重要です。
再建築不可の土地とは、現状の建物を解体した後、新しい家を建てられない土地のことであり、この事実を知らずに解体してしまうと、土地の利用が限られ、買い手が見つかりにくくなります。
自分の物件が再建築不可のエリアに該当するかは、市区町村に問い合わせて確認できます。
もし再建築不可であれば、解体せずにリフォームして売却するなどの方法を検討しましょう。
契約不適合責任への留意
築50年の一戸建てを売却する際には、契約不適合責任に注意が必要です。
契約不適合責任とは、物件の引き渡し後に契約書に記載されていない不具合が発見された場合、売主が負う責任のことです。
古い家の場合、引き渡し後に不具合が見つかる可能性が高くなります。
例えば、引き渡し後にシロアリの被害が見つかった場合、それが契約書に記載されていなければ、契約不適合責任が発生することがあります。
こうしたリスクを避けるためには、売主と買主の間で契約不適合責任を免責する内容を明確に記載しておくことが重要です。
売却期間に余裕を持って販売計画を進める
築50年の一戸建ては買い手が見つかるまでに時間がかかることが多いため、売却期間には余裕を持って計画を立てることが重要です。
一般的な不動産売却では、査定依頼から売却完了までに3〜6ヶ月程度かかることが多いですが、築年数が古い物件の場合はそれ以上の時間がかかることもあります。
古い家は購入希望者が少ないため、買い手を見つけるのが困難で、リフォームや更地にしてから売却する場合はさらに時間がかかることがあります。
焦って売却を進めると、相場より低い価格で売却することになりかねません。
損を避けるためには、余裕を持って販売計画を立て、不動産会社への査定依頼を早めに行い、売却に十分な時間を確保することが大切です。
相続した築50年の一戸建てを売却する場合の節税対策
相続で取得した築50年の一戸建てを売却する場合、条件はありますが「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例」を利用することができます。
通常、不動産を売却すると譲渡所得が発生しますが、この特例を適用することで最大3,000万円まで控除され、税負担を軽減することが可能です。
これを適用するための主な条件は以下の通りです。
- 昭和56年5月31日以前に建てられていること
- 区分所有建物登記がされていないこと
- 相続の開始直前に被相続人以外が居住していなかったこと
その他の詳しい条件については、国税庁の公式ページをご確認ください。
まとめ
築50年の一戸建てを売却する際は、物件の状態や売却方法の選択、節税対策などを十分に考慮することが重要です。
特に、再建築の可否や契約不適合責任への対応、売却期間の計画に注意しましょう。
また、複数の不動産会社に査定を依頼し、売却相場を自分で把握することも大切です。
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