
相続したマンションを売却しようとお考えの方は、税金に関する不安や、控除・特例の活用方法について悩んでいませんか?
親から受け継いだ大切な資産だからこそ、後悔しないように売却を進めたいものです。
実は、相続マンションの売却で税負担を抑えるには、譲渡所得税の仕組みや利用できる控除・特例を正しく理解し、事前にシミュレーションしておくことが非常に重要です。
この記事では、相続したマンションを売却する際に押さえておきたい税金対策を、手続きの流れ、税金の基礎知識、控除・特例の活用、売却実務、トラブル回避策、売却後の手続きというステップに沿って、網羅的に解説します。
賢く税金対策を行い、スムーズな売却を実現するためのポイントを見ていきましょう。
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目次
相続発生から売却までの基本ステップ
相続したマンションを売却するには、まず相続手続きを完了させ、売却に向けた準備を進める必要があります。慌てずに、順を追って進めましょう。
- 相続発生時の対応と手続きの流れ
- 売却に向けた初期準備
以下にて詳しく解説します。
相続発生時の対応と手続きの流れ
マンションを相続した場合、売却までの手続きとして、まず相続人を確定し、遺産分割協議を経て遺産分割協議書を作成します。
その後、法務局で相続登記(名義変更)を行いますが、この手続きは戸籍謄本など多くの書類が必要で複雑なため、司法書士に依頼するとスムーズでしょう。
なお、2024年4月1日から相続登記は義務化されており、相続の開始を知った日から3年以内に申請が必要です。
(出典:法務省:相続登記の申請義務化について)
登記が完了しないと原則としてマンションの売却はできませんので、速やかに手続きを進めましょう。
登記が完了すれば、マンションの売却が可能になります。
売却に向けた初期準備
名義変更(相続登記)の準備と並行して、売却に向けた準備も進めることが大切です。
まず、売却可能額の目安を知るには、不動産情報サイトで近隣の相場を調査したり、複数の不動産会社へ無料査定を依頼して比較検討したりすると良いでしょう。
これにより、資金計画なども立てやすくなります。
さらに、売却時には仲介手数料などの諸費用が発生し、売却益が出た場合には譲渡所得税が課される点にも注意が必要です。
相続税の支払いも考慮に入れ、どのような費用や税金がかかるのかを早期に把握したうえで、余裕を持った資金計画を立てることが求められます。
相続マンション売却にかかる税金の全体像
相続したマンションの売却に関連する税金はいくつかあります。それぞれの税金の基本的な仕組みを理解しておきましょう。
- 課税される主な税金の種類と基礎知識
- 譲渡所得税の計算方法と注意点
課税される主な税金の種類と基礎知識
相続したマンションの売却では、主に以下の税金について理解しておく必要があります。
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これらの税金の計算や手続きは複雑な場合もありますので、必要に応じて税務署や税理士などの専門家にご相談ください。
譲渡所得税の計算方法と注意点
譲渡所得税額を正しく知るために、計算の仕組みと注意点を押さえておきましょう。
譲渡所得の算出方法:
譲渡所得 = 不動産売却による収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)
相続したマンションを売却して利益(譲渡所得)が出た場合の税金計算に関わる主な項目について、以下の表にまとめました。
項目 | 内容/定義 | 具体例/計算方法 |
---|---|---|
取得費 | 亡くなった方(被相続人)がそのマンションを購入した時の代金や手数料など。 | 建物の場合は、購入代金から経過年数に応じた価値の減少分(減価償却費)を差し引いて計算します。 |
譲渡費用 | マンションを売却するために直接かかった費用。 | ・仲介手数料 ・売買契約書の印紙税 ・売却に伴う登記費用(抵当権抹消など) ・測量費 ・建物解体費用(更地で売る場合) ・立退料(入居者がいた場合)など。 |
税率(譲渡所得税) | 譲渡所得(売却利益)に対してかかる税金(所得税・復興特別所得税・住民税)の率。所有期間によって異なります。 | ・短期譲渡所得(所有期間5年以下):約39.6% ・長期譲渡所得(所有期間5年超):約20.3% |
注意点:
譲渡所得税の計算における主な注意点は以下の通りです。
- 取得費:購入時の売買契約書を保管。紛失すると税金が高くなる可能性あり。
- 譲渡費用:仲介手数料などの領収書を保管し、全て計上することで税金を抑える。
- 所有期間:売却年の1月1日時点の所有期間で税率が変わるため、正確に把握する。
税金対策の核心!控除・特例の活用法
譲渡所得税は高額になる可能性がありますが、様々な控除や特例制度を利用することで、税負担を大幅に軽減できる場合があります。適用要件を確認し、賢く活用しましょう。
- 利用可能な主な控除・特例制度の解説
- 控除・特例の適用要件と注意点
- ケース別シミュレーション:控除活用による節税効果
利用可能な主な控除・特例制度の解説
相続したマンションの売却時には、特定の条件下で税負担を軽減できる控除や特例があります。主なものは以下の通りです。
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参照元)
※2 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁
※3 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
※4 No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁
各特例の適用要件は複雑なため、詳細は必ず税務署や税理士などの専門家にご確認ください。
控除・特例の適用要件と注意点
税金が安くなる制度(控除や特例)を使うには、それぞれに「実際に住んでいたか?」「亡くなった親が一人暮らしだったか?」「いつまでに売る必要があるか?」といった細かいルール(条件)があります。
注意したいのは、一緒には使えない制度の組み合わせもあることです。
例えば、相続税を払った人が使える「相続税の一部を費用とみなす特例」などが該当します。
ケース別シミュレーション:控除活用による節税効果
適用する控除・特例によって納税額は大きく変動します。
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※300 万円=相続税1,500 万円 ×(マンションの相続税評価額2,000 万円 ÷ 相続財産総額1億円)
※※所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%(令和19年まで)
例えば、相続税の取得費加算特例を使えば支払った相続税の一部が経費として認められ(※例示のケースでは約61万円の節税効果)、3000万円控除の適用なら譲渡所得3000万円までは非課税となります。
このように、最適な制度や節税効果は個別の状況で異なるため、売却前に自身のケースで具体的な税額を試算(シミュレーション)し、最適な節税策を検討することが極めて重要です。
売却実務と費用:タイミング・業者選び・諸経費
税金対策と並行して、実際の売却活動をスムーズに進めるための準備も重要です。売却タイミング、費用の把握、そして信頼できるパートナー選びが鍵となります。
- 最適な売却タイミングの見極め方
- 売却にかかる費用
最適な売却タイミングの見極め方
最適な売却時期を見極めるには、景気や金利による市場動向、引越しシーズンなどの需要期を把握することが大切です。
不動産会社の査定や市場レポートを参考に、売り手が有利な状況か判断しましょう。
売却を急がない場合は待つ選択肢もありますが、その間の固定資産税など維持費の負担は考慮が必要です。
また、相続税の取得費加算特例を利用するなら、期限(相続開始後3年10ヶ月以内)も重要な判断材料となります。
売却にかかる諸費用
マンションを売却する際には、税金の他に様々な費用がかかります。
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※出典: 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」
これらの費用を事前にリストアップし、予算を把握しておくことが重要です。
不動産会社・専門家との連携
マンション売却では専門家の協力が心強いです。
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いずれの場合も、早めに専門家へ相談することで、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。
円満な相続と売却のための注意点
相続したマンションの売却では、手続きや税金だけでなく、相続人間の意見調整も重要な課題です。トラブルを未然に防ぎ、円満に進めるためのポイントを押さえましょう。
- 親族間トラブルの予防策
- 特殊ケースへの対応
以下にて詳しく解説します。
親族間トラブルの予防策
相続トラブルを避けるには、相続人全員でマンションの扱い(取得者、分割方法など)を具体的に話し合い、合意形成を図ることが重要です。
決定事項は「遺産分割協議書」として書面にまとめ、相続人全員が内容を確認した上で署名し、実印で押印します。
この遺産分割協議書は、相続登記(不動産の名義変更)や預貯金の解約・名義変更といった様々な相続手続きにおいて、相続人間の合意内容を証明する重要な書類となります。
法的に定められた形式はありませんが、誰がどの財産をどれだけ取得するのかを具体的に明記する必要があります。また、手続きの際には各相続人の印鑑証明書の提出も求められるため、併せて準備しましょう。
なお、遺産分割協議書の作成自体は自分たちでも行えますが、記載内容に不備があると手続きが進められない場合もあります。
不安な場合や、より確実に作成したい場合は、行政書士や司法書士、弁護士といった専門家に作成を依頼することも可能です。また、公証役場で公正証書として作成すれば、より高い証明力と執行力を持たせることもできます。
協議中は冷静な情報共有とこまめな連絡を保ち、意見が対立しそうな場合は、早期に第三者(家庭裁判所の調停や弁護士など)への相談を検討しましょう。
特殊ケースへの対応
遺産分割で注意すべき特殊ケースに「共有名義」と「相続放棄」があります。
マンションを共有名義で相続すると、売却には共有者全員の同意が必要となり、将来的に権利関係の複雑化や費用負担をめぐるトラブルリスクも生じます。
そのため、可能であれば単独相続とするか、売却して現金で分ける換価分割が推奨されます。
一方、相続自体を望まない場合は、相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で「相続放棄」の手続きを行えば、プラスの財産もマイナスの負債も引き継ぐ必要はありません。
ただし、相続放棄は他の相続人の相続分に影響を与えるため、実行前に十分な検討と関係者との相談が不可欠です。
売却後の手続きと最終確認
マンションの売却が無事に完了した後も、まだ手続きが残っています。特に確定申告は重要ですので、忘れずに行いましょう。
- 確定申告の要否判断
- 税金シミュレーションによる最終確認
確定申告の要否判断
マンション売却後、確定申告が必要か確認しましょう。売却で利益(譲渡所得)が出たら申告が必要です。
控除や特例(3000万円控除など)を使って計算上の税金がゼロ円になったとしても、その制度を利用するためには確定申告が必須です。
逆に損失が出た場合、通常は申告不要ですが、損失を翌年以降に繰り越して税金を安くする特例を使うなら申告が必要になります。
つまり、申告が全く不要なのは「損失が出て、かつ損失の特例も使わない」ケースのみと考えましょう。なお、申告は売却した翌年の2月16日~3月15日です。
税金シミュレーションによる最終確認
相続したマンションの売却後の確定申告準備ができたら、提出前に最終確認をしましょう。
まず、計算した譲渡所得税の金額が正しいか、もう一度見直します。次に、売却のために支払った仲介手数料などの経費(譲渡費用)について、領収書をすべて揃え、計上漏れがないかを確認してください。
利用する控除や特例がある場合は、その適用条件を再度チェックし、必要な証明書類が全て手元にあるかも確かめましょう。
少しでも不安や疑問点があれば、遠慮なく税務署や税理士に相談することが大切です。
まとめ
相続したマンションを売却するには、相続手続きから税金の計算、売却活動、確定申告まで、多くの段階があります。
特に、売却利益にかかる譲渡所得税は、計算方法や控除・特例の利用方法によって大きく変わるため、注意が必要。
譲渡所得税の計算には、親がマンションを購入した時の価格(取得費)を書類で確認することが必要であり、利用できる税金控除・特例の条件もチェックすることが重要です。
控除や特例を使うことで、税金を大幅に減らせる可能性があります。
また、事前に税額を試算(シミュレーション)して計画を立てることも大切です。どれくらいの税金がかかるのかを把握することで、売却計画を立てやすくなります。
複雑な手続きや税金の判断は、無理せず専門家(司法書士、税理士、不動産会社)に相談し、相続人間での円満な話し合いも心がけましょう。
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