離婚時のマンション売却で押さえておくべき全知識|手順から費用税金まで徹底解説

離婚 マンション 売却

「離婚が決まったけれど、マンションを売るって言っても、何から始めたらいいのだろう…」

「手続きとか、かかるお金とか、税金、財産の分け方で失敗したり、元パートナーとギクシャクするのは絶対にイヤだなあ」なんて、悩んでいませんか。

その気持ち、すごくよく分かります。よく知らないまま進めてしまうと、時間もお金も余計にかかってしまい、心の負担まで増えてしまうことも少なくありません。でも、大丈夫です。

離婚のときのマンション売却をスムーズに、そしてお互いにとって良い形で進めるには、知っておくべき大切な知識と手順があります。

この記事では、離婚するときのマンション売却の手順から、かかる費用や税金、財産の分け方のポイントまで、あなたが知りたい全ての情報を徹底的に解説します。

この記事のポイント

  1. 離婚するときのマンション売却の基本的な流れや、準備すること
  2. 住宅ローンが残っている場合にどうすればいいか、また売却にかかる費用や税金の知識
  3. 財産を公平に分けるためのポイントや気をつけるべきこと
  4. スムーズに売却するための不動産会社の選び方や、離婚後の生活設計のヒント

目次

離婚するときのマンション売却、まず何から始める?知っておきたい基本のこと

離婚のとき、マンションをどうするかは大きな問題ですよね。

特に売るとなると、何から手をつければいいか分からなくて不安になるかもしれません。

この章を読めば、売却の最初のステップと基本的な知識がスッキリ分かります。

具体的には、以下の内容を説明していきます。

  • まずチェック!マンションの持ち主は誰?住宅ローンは残っている?
  • 夫婦での話し合いがとっても大事!売る意思と条件をしっかり共有しましょう
  • 離婚とマンション売却、ベストなタイミングはいつ?
  • 「離婚した後」にマンションを売るときの注意点

以下にて詳しく見ていきましょう。

まずチェック!マンションの持ち主は誰?住宅ローンは残ってる?

マンションを売ろうと考え始めたら、一番最初にやるべきことは、今の状況を正確に知ることです。

特に大切なのが、「マンションの持ち主(名義人)は誰になっているか」そして「住宅ローンがまだ残っているか、もし残っていたら、詳しい内容はどうか」という2点です。

マンションの持ち主が、夫婦のどちらか一人なのか、それとも二人一緒の「共有名義」なのかによって、売るときの進め方や必要な書類が変わってきます。

例えば、二人一緒の共有名義だったら、売るためには持ち主全員のOKが必要になります。

法務局という役所で「登記事項証明書(とうきじこうしょうめいしょ)」という書類をもらえば、誰が本当の持ち主か正確に分かるでしょう。

また、住宅ローンが残っている場合は、お金を借りている銀行などの金融機関から「残高証明書」という書類をもらって、ローンの残りの金額や金利、あと何年で返し終わるかなどを把握しましょう。

マンションを売ったお金でローンを全部返せるか、それとも返しきれないか(これをアンダーローンとかオーバーローンと言います)は、どうやって売るかを考える上でとても重要なポイントとなります。

これらの情報は、これから夫婦で話し合ったり、不動産会社に相談したりするときにスムーズに進めるための基本になるので、必ず最初に確認してください。

夫婦での話し合いがとっても大事!売る意思と条件をしっかり共有

マンションの今の状態が分かったら、次にやるべきなのは夫婦二人でしっかり話し合うことです。

気持ちが揺れ動きやすい時期かもしれませんが、マンションを売ることは夫婦二人にとって大きな影響があるので、落ち着いて、前向きに話し合うことが求められます。

まず、そもそもマンションを「売る」のか、それともどちらかが「住み続ける」のか、あるいは誰かに「貸す」のかといった大きな方針について、お互いの気持ちを確かめ合う必要があります。

「売る」という結論になったとしても、いくらぐらいで売りたいか、売って手に入ったお金をどう分けるか、売るためにかかるお金(諸経費)をどっちがどれだけ出すか、いつまでに売りたいかといった具体的な条件についても、前もってちゃんと話し合って、お互いが納得しておくことが大切です。

特に、マンションが二人一緒の持ち物(共有名義)だったり、夫婦のどちらかが住宅ローンの保証人(連帯保証人)になっていたりする場合は、夫婦で協力しないと売るのは難しいでしょう。

この段階で話し合って決まったことは、後で「言った」「言わない」のトラブルにならないように、必ず紙に書いて残しておくことを強くおすすめします。例えば、「離婚協議書」や「財産分与契約書」といった書類にハッキリ書いておくと安心です。

離婚とマンション売却、ベストなタイミングはいつ?

離婚のときにマンションを売る上で、「いつ売るのが一番いいの?」というタイミングも悩むポイントですよね。

一般的に考えられるのは、「離婚する前」「離婚した後」「離婚と同時」の3つのタイミングですが、それぞれに良い点と少し困る点が存在します。

離婚する前に売る場合のメリットは、まだ夫婦として協力しやすい状況なので、手続きがスムーズに進む可能性があることです。

また、分けるべき財産を現金にできるので、分けやすくなることもあります。

デメリットとしては、まだ離婚が決まっていない段階で売る話を進めることへの気持ちの負担や、売る活動をしている間に夫婦の関係がもっと悪くなってしまうかもしれない、という心配が挙げられます。

一方で、離婚した後に売る場合は、財産の分け方などが決まった後で、落ち着いて手続きを進められるというメリットがあります。

しかし、もう別々に暮らしていると連絡が取りにくくなったり、協力してもらいにくくなったりする可能性も考慮しなければなりません。

どのタイミングがベストかは、夫婦の関係や住宅ローンの状態、どうして売りたいのかなどによって違ってきます。

それぞれの良い点・困る点をよく理解した上で、専門家にも相談しながら、夫婦でじっくり話し合って決めることが大切です。

「離婚した後」にマンションを売るときの注意点

色々な事情で、離婚が決まった後にマンションを売る手続きを進めることも少なくありません。

離婚した後に売る活動をする場合、特に気をつけておきたい点がいくつかあります。

まず、元パートナーと連絡が取れるようにしておくことが、すごく大切です。

売る手続きには、元パートナーのサインや実印が必要になる場面がたくさんありますから、連絡が取れなくなってしまうと、売ること自体がダメになってしまう可能性もあるので、気をつけてください。

次に、財産の分け方について決めたことを、「公正証書(こうせいしょうしょ)」のような法律的にもしっかりした形で残しておくことです。

口約束だけだと、後になって「そんなこと言った」「いや聞いてない」といったトラブルになりかねません。

売ったお金をどう分けるか、かかる費用をどう負担するかをハッキリ決めておくことで、安心して売ることを進められます。

また、住宅ローンの名義(誰の名前でローンを組んでいるか)や、連帯保証人(もし返せなくなった時に代わりに返す責任を負う人)の関係もちゃんとしておく必要があります。

例えば、元夫の名前でローンが残っているマンションに元妻が住み続けて、後で売る場合など、複雑な状況になることもあります。

銀行などの金融機関も交えて、前もってしっかり確認したり、調整したりしておくことが、後々のトラブルを避けるためには絶対に必要です。

離婚するときのマンション売却に失敗しない!具体的な手順と流れ

マンションを売る手順って、なんだか複雑そうで不安になりますよね。でも大丈夫です。この章を読めば、具体的な流れがステップごとに分かります。
具体的には、こんなステップで説明していきます。

  • STEP1:不動産会社に査定をお願いして、大体の相場を知る
  • STEP2:不動産会社と契約を結んで、売るための活動をスタートさせる
  • STEP3:「買いたい」という人と交渉して、売買の契約を結ぶ
  • STEP4:残りのお金をもらって、マンションを引き渡し、名義変更などの手続きをする

失敗しないための手順を、1つ1つ見ていきましょう。

STEP1:不動産会社に値段の査定をお願いして、大体の相場を知る

マンション売却の最初のステップは、信頼できる不動産会社を見つけて、持っているマンションの値段がどれくらいか「査定」してもらうことから始まります。

査定とは、不動産会社がマンションの状態や周りの似たような物件の取引価格などをもとに、「大体これくらいで売れそうかな」という予想価格を計算してくれることです。

このとき、1社だけでなく、いくつかの不動産会社に査定をお願いする「相見積もり」をすることを強くおすすめします。

なぜかというと、不動産会社によって査定で出てくる値段や、どうやって売るかの作戦、得意なマンションの種類などが違うからです。

いくつかの会社を比べることで、自分のマンションの価値をより公平に知ることができますし、信頼できるパートナーを見つけることにもつながるでしょう。

査定の方法には、マンションの情報だけで簡単に見積もりを出す「机上査定」または「簡易査定」と、実際にマンションの中や周りを見て詳しく値段を出す「訪問査定」があります。

離婚のときの売却では、より正確な値段を知るためにも、訪問査定をお願いするのが普通です。

査定の結果が出たら、どうしてその値段になったのか、どうやって売る活動をしていくのかなどについてもしっかり説明を受けて、納得できる不動産会社を選びましょう。

また、査定と同時に、自分でもインターネットの不動産情報サイトなどで、近所の似たようなマンションがいくらで売りに出されているか、いくらで売れたのかを調べることで、大体の相場観を掴むことができます。

STEP2:不動産会社と契約を結んで、売るための活動をスタート

売却をお願いする不動産会社が決まったら、その会社と「媒介契約(ばいかいけいやく)」という契約を結びます。

媒介契約とは、不動産会社にマンションを売る活動を正式にお願いするための契約のことです。

この契約には、主に次の3種類があり、それぞれの特徴をよく理解した上で、自分の状況に合ったものを選ぶ必要があります。

契約の種類 特徴 メリット デメリット
一般媒介契約 複数の不動産会社に同時に仲介を依頼できる。自分で買主を見つけることも可能。 幅広いネットワークで買主を探せる可能性がある。 不動産会社の積極性が低くなる場合がある。
専任媒介契約 仲介を依頼できるのは1社のみ。自分で買主を見つけることは可能。 不動産会社が積極的に販売活動を行う傾向がある。 1社の販売力に依存する。
専属専任媒介契約 仲介を依頼できるのは1社のみ。自分で買主を見つけることも禁止。 最も手厚いサポートが期待できる。 依頼した不動産会社の力量に完全に左右される。

契約の種類を選んだら、いくらで売り出すかを決めます。

これは、査定で出た値段や市場の状況、いつまでに売りたいかなどを考えて、不動産会社とよく相談して決めましょう。

値段が決まったら、いよいよ売るための活動が始まります。不動産会社は、自分のお店のウェブサイトや大きな不動産情報サイトにマンションの情報を載せたり、チラシを

配ったり、実際に部屋を見てもらう「オープンハウス」を開いたりして、色々な方法で買い手を探してくれます。

売る側としては、「見たい」という人が来たときにスムーズに対応できるように、部屋をキレイにしておくなどの準備をしておくことが大切です。

STEP3:「買いたい」という人と交渉して、売買の契約を結ぶ

売る活動を進めていると、マンションに興味を持った「買いたい」という人から、「購入申込書」または「買付証明書」という書類が出されることがあります。

この書類には、いくらで買いたいか、お金の払い方、いつ引き渡してほしいかなどが書かれています。買いたい値段が、売りに出している値段と同じなら問題ありませんが、多くの場合、値段の交渉が入ります。また、引き渡しの時期や他の条件についても話し合いが必要になることがあるでしょう。

これらの交渉は、基本的には不動産会社が間に入って進めてくれるので、落ち着いて自分の希望を伝え、どこまでなら譲れるか、どこは譲れないかをハッキリさせて対応しましょう。

離婚で売るということを伝えるかどうかは、状況や不動産会社の担当者と相談して決めるといいでしょう。

交渉がまとまって、売る側と買う側の双方が条件に合意したら、正式に「売買契約」を結びます。

売買契約のときには、マンションの詳しい情報、売る値段、お金の払い方、引き渡しの時期、契約をやめる場合のルールなどが書かれた「売買契約書」の内容をしっかり

確認して、サインとハンコを押します。

また、このときに買う人から「手付金」(普通は売る値段の5%〜10%程度)をもらうのが一般的です。

手付金は、契約が決まった証として、また、もし契約がキャンセルになったときのキャンセル料の一部として扱われることがあります。

STEP4:残りのお金をもらって、マンションを引き渡し、名義変更などの手続きをする

売買契約が無事に終わったら、契約書で決めた引き渡し日に向けて準備を進めます。引き渡しの日には、主に次のようなことが行われます。

  • 売買代金の残金を受領する: 買主から、売買代金の残金が支払われます。通常、金融機関の応接室などで行われることが多いです。
  • 諸費用を支払う: 不動産会社への仲介手数料や、名義変更などの手続き(登記)にかかる費用など、売却にかかった費用を支払います。
  • 住宅ローンを完済し、抵当権を抹消する手続き: 売却するマンションに住宅ローンが残っている場合は、受領した売買代金でローンを完済し、金融機関などがマンションに設定していた権利(抵当権)を抹消する手続きをします。これは、法律の専門家である「司法書士」に依頼するのが一般的です。
  • 所有権を移転する手続き(所有権移転登記): マンションの所有名義を買主に変更するための手続きをします。これも司法書士が代行することが多いでしょう。
  • マンションを引き渡す: マンションの鍵を買主に渡し、マンションを引き渡します。事前に引っ越しを済ませ、空室の状態にしておく必要があります。

これらの手続きが全て完了すれば、マンションの売却は完了です。複雑に感じるかもしれませんが、不動産会社や司法書士がサポートしてくれるため、各ステップを確実に進めていけば問題ありません。

売却後は、「確定申告」という税務手続きが必要になる場合があることも覚えておきましょう。

【住宅ローンが残っている方へ】離婚するときのマンション売却、知っておくべき大切なこと

住宅ローンがまだ残っているマンションを売るのって、すごく不安ですよね。でも大丈夫です。この章を読めば、ローンがある場合の対処法や気をつけるべきことが分かります。

  • 「アンダーローン」と「オーバーローン」って何が違うの?
  • もし「オーバーローン」だったらどうする? 自分のお金で払う? それとも「任意売却」?
  • 「任意売却」とはどんなものか? メリットやデメリット、手続きの流れは?
  • 「連帯保証人」や「ペアローン」の場合は特に注意が必要!

特に知っておいてほしい大切なことを以下にて詳しく説明します。

「アンダーローン」と「オーバーローン」って何が違うの?

住宅ローンが残っているマンションを売るとき、まず知っておかないといけない大切な言葉が「アンダーローン」と「オーバーローン」です。
この2つの状態で、売るときの進め方や気をつけることが大きく変わってきます。

  • アンダーローン: マンションを売った値段が、住宅ローンの残りの金額よりも多い状態のことです。例えば、マンションが3,000万円で売れて、住宅ローンの残りが2,500万円だったら、売ったお金でローンを全部返しても、手元に500万円残りますよね。この残ったお金から、売るためにかかった費用を払って、さらに残った分を夫婦で分けることができます。アンダーローンの場合は、比較的スムーズに売る手続きを進めやすいと言えるでしょう。
  • オーバーローン: 反対に、マンションを売った値段が、住宅ローンの残りの金額よりも少ない状態のことです。例えば、マンションが2,000万円でしか売れないのに、住宅ローンの残りが2,500万円あったら、売ったお金だけではローンを全部返すことができなくて、500万円足りなくなってしまいます。この足りない分をどうやって用意するかが、オーバーローンの場合の大きな問題になります。

自分のマンションがどっちの状態なのかを正確に知るためには、まず不動産会社に査定をお願いして、どれくらいで売れそうかを知り、それと住宅ローンの残りの金額を比べる必要があります。

もし「オーバーローン」だったらどうする? 自分のお金で払う? それとも「任意売却」?

もし、自分のマンションが「オーバーローン」だと分かった場合、どうすればいいのでしょうか。主な対応の仕方としては、次の2つが考えられます。

  1. 足りない分を自分のお金で支払う: 一番シンプルな方法は、売ったお金だけでは返しきれないローンの足りない分を、貯金などの自分のお金で支払うことです。

例えば、ローンの残りが2,500万円で、売った値段が2,000万円の場合、足りない500万円を現金で用意できれば、ローンを全部返してマンションを売ることができます。

しかし、離婚するときは色々なことにお金がかかることも多いので、まとまったお金を用意するのが難しい場合も少なくありません。

  1. 「任意売却(にんいばいきゃく)」を考えてみる: 自分のお金で足りない分を支払うのが難しい場合に考えられるのが、「任意売却」という方法です。

任意売却とは、住宅ローンの返済が難しくなったときに、お金を貸してくれている銀行などの金融機関(債権者といいます)と話し合ってOKをもらい、普通の市場でできるだけ高く不動産を売る方法のことです。

裁判所を通して売られる「競売(きょうばい)」よりも良い条件で売れる可能性があって、残ってしまったローンの返し方についても銀行と話し合える場合があります。

オーバーローンの場合は、一人で悩まずに、まずは不動産会社や銀行、場合によっては弁護士さんのような専門家に相談することが大切です。

「任意売却」ってどんなもの? メリットやデメリット、手続きの流れは?

自分のお金でローンの残りを払えないときの選択肢として出てくる「任意売却」ですが、具体的にはどんなものなのでしょうか。

良い点(メリット)と少し困る点(デメリット)、そして手続きがどう進むのかを知っておきましょう。

任意売却の主な利点(メリット)

  • 市場価格に近い価格での売却可能性: 裁判所が関与する競売と比較して、一般市場での売却活動となるため、より市場実勢に近い価格での成約が期待できます。これにより、売却後の残債務を圧縮できる可能性があります。
  • プライバシー保護への配慮: 競売のように情報が広く公開されることが比較的少ないため、周囲に事情を知られずに売却手続きを進めやすいという利点があります。
  • 引渡し時期等の条件交渉の柔軟性: 購入希望者や金融機関との協議により、引渡し時期など諸条件について、ある程度の柔軟な調整が期待できる場合があります。
  • 残債務の返済計画に関する協議可能性: 売却後も残ってしまう債務について、金融機関と分割返済等の返済計画を協議できる可能性があります。

任意売却における留意点(デメリット)

  • 成立の不確実性: 金融機関の同意が得られない場合や、所定の期間内に買主が見つからない場合など、任意売却が成立しないケースも存在します。
  • 個人信用情報への影響: 多くの場合、住宅ローンの返済遅延が前提となるため、個人信用情報に事故情報として登録される可能性があります(いわゆるブラックリストへの掲載)。これにより、将来的な新規借入れやクレジットカード作成が困難になる場合があります。
  • 連帯保証人への影響: 連帯保証人が設定されている場合、売却後に残った債務の返済義務が連帯保証人に及ぶ可能性があります。

任意売却の主な手続きの流れ

  1. 金融機関との協議および合意形成: まず、住宅ローンを借入れている金融機関に対し、返済困難な状況を説明し、任意売却を行うことについて同意を得る必要があります。
  2. 不動産会社への依頼: 任意売却の実績が豊富な不動産会社を選定し、査定および販売活動を依頼します。
  3. 販売活動と買主の探索: 一般的な不動産売却と同様の手法で販売活動を行い、購入希望者を探します。
  4. 金融機関との最終調整および売買契約締結: 購入希望者が見つかった場合、売却価格や諸条件について金融機関の最終的な同意を得た上で、売買契約を締結します。
  5. 代金決済および物件引渡し: 売買代金を受領し、その一部を住宅ローンの返済に充当した後、物件を買主に引き渡します。
  6. 残債務の処理: 売却後も債務が残る場合は、金融機関と今後の返済計画について協議します。

任意売却は専門的な知識と交渉力が求められるため、経験豊富な不動産会社や弁護士等の専門家へ相談しながら手続きを進めることが賢明です。

「連帯保証人」や「ペアローン」の場合は特に注意!

離婚するときのマンション売却で、住宅ローンの「連帯保証人」や「ペアローン」の扱いは、特に気をつけないといけないポイントです。

これらは、夫婦のどちらか、あるいは両方が大きな責任を負っている状態なので、簡単に考えてしまうと後で大きなトラブルになるかもしれません。

連帯保証人がいる場合

例えば、夫が住宅ローンの主な借り手(主債務者)で、妻がその連帯保証人になっている場合を考えてみましょう。

この場合、離婚して妻がその家に住まなくなったとしても、連帯保証人としての責任は基本的にはなくなりません。

つまり、もし夫がローンの返済をできなくなったら、銀行は妻に対して「代わりに返してください」と言うことができます。

マンションを売ってローンを全部返せれば問題ありませんが、もしオーバーローンでローンが残ってしまった場合、連帯保証人である元妻にも返す義務が出てくる可能性があるのです。

売るときには、連帯保証人から外れるための手続きを銀行と話し合うか、売ったお金でローンを全部返せるように頑張る必要があります。

ペアローン(夫婦それぞれがローンを組んでいる場合)の場合

ペアローンは、夫婦それぞれが住宅ローンを契約して、お互いが相手のローンの連帯保証人になるという形が一般的です。

この場合、離婚したとしても、それぞれの返す義務と連帯保証の責任は残ります。

マンションを売って二人のローンを全部返せれば一番スッキリしますが、オーバーローンの場合は、残ったローンをそれぞれがどうやって返していくのか、連帯保証の責任をどうするのか、といったことをハッキリ決めておく必要があります。

銀行との話し合いも必要になるでしょう。

これらのケースでは、売るかどうかを決めることから、条件の話し合い、銀行とのやり取りまで、夫婦(元夫婦)二人が協力して、きちんと対応することが求められます。

場合によっては、弁護士さんのような専門家に入ってもらって、法律の面からも問題を整理して、解決方法を探すことが大切になるでしょう。

離婚するときのマンション売却にかかるお金と税金は?分かりやすく解説

マンションを売るときにかかる費用や税金って、いったいいくらかかるのか気になりますよね。

この章を読めば、主にかかる費用と税金のこと、そして少しでも安くするポイントも分かります。

  • 売るときにかかる色々な費用の一覧(不動産会社への手数料、契約書に貼る印紙代など)
  • マンションを売って利益が出たときにかかる税金(譲渡所得税)について
  • 税金の負担を軽くする特別なルールや控除(3,000万円特別控除など)にはどのようなものがあるか
  • 離婚するときのマンション売却と税金などについてのQ&A

離婚するときのマンション売却で主にかかる費用と税金について、分かりやすく説明していきます。

売るときにかかる色々なお金の一覧(不動産会社への手数料、契約書に貼る印紙代など)

マンションを売るときには、主に次のような費用がかかります。

費用の種類 内容・説明 支払うタイミング 目安の金額
仲介手数料 不動産会社に売るのを手伝ってもらって、売買契約が決まったときに支払う成功報酬。法律で上限額が決まっています。 売買契約時と引き渡し時に半分ずつが多い (売った値段の3% + 6万円)+ 消費税 が上限(売った値段が400万円を超える場合)
印紙税 売買契約書に貼る「収入印紙」という切手のようなもののお金。契約する金額によって税金の額が変わります。 売買契約締結時 “数千円~数万円程度(例:1,000万円超5,000万円以下の契約で1万円) “
住宅ローンに関係する費用 住宅ローンが残っている場合にかかる費用。主に、一括で全部返すための手数料や、銀行がマンションにつけていた権利(抵当権)を消すための手続き費用など。 ローンの完済時・引き渡し時 金融機関や司法書士によって違う(数千円~数万円程度)
登記費用 抵当権を消す手続きのほか、持ち主の住所や名前が登記簿(権利関係の記録)と違う場合に直す手続きの費用など。司法書士への報酬も含まれます。 引き渡し時 数万円程度
その他の費用 引っ越し費用、家をキレイにするハウスクリーニング費用、いらない物を捨てる費用、土地の広さを測る測量費用(必要な場合)など、状況によってかかるお金です。 それぞれかかるとき 内容によって大きく変わります

これらの諸費用は、おおよそ売却金額の4%~6%程度が目安と言われています。
ただ、マンションの状態や契約の内容によって変わるので、前もって不動産会社に見積もりを出してもらって、具体的な金額を知っておくことが大切です。

マンションを売って利益が出たときにかかる税金(譲渡所得税)

マンションを売って、買ったときよりも高い値段で売れた場合、その儲け(これを「譲渡所得(じょうとしょとく)」と言います)に対して、所得税と住民税という税金がかかります。

これをまとめて「譲渡所得税」と言います。

譲渡所得は、次の計算式で計算します。

収入金額 – ( 取得費譲渡費用) – 特別控除額 = 課税譲渡所得金額

  • 買ったときにかかったお金(取得費): マンションを買ったときの値段や、そのときにかかった不動産会社への手数料、登記費用などから、建物の古くなった分の価値(減価償却費)を引いたもの。
  • 売るためにかかったお金(譲渡費用): 売るときにかかった不動産会社への手数料や印紙税など。

この計算で譲渡所得がプラスになった場合に、税金がかかる可能性があります。

税金の割合(税率)は、マンションを持っていた期間によって違っていて、次のようになります。

  • 短期譲渡所得: 持っていた期間が5年以下の場合。税金は高めになります(所得税30.63%、住民税9%)。
  • 長期譲渡所得: 持っていた期間が5年を超える場合。税金は比較的低めになります(所得税15.315%、住民税5%)。

※持っていた期間は、売った年の1月1日時点で計算します。
※税率には、復興特別所得税という特別な税金も含まれています。
出典)No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁

離婚のときに財産を分けるためにマンションを相手に渡した場合でも、渡したときのマンションの価値が、買ったときにかかったお金より高ければ、基本的には譲渡所得税がかかる対象になるので注意が必要です。

ただし、次に説明する特別なルールを使える場合があります。

税金の負担を軽くする特別なルールや控除(3,000万円特別控除など)

マンションを売って利益が出た場合でも、税金の負担を軽減できる特別なルールや「控除(こうじょ)」という仕組みがいくつか用意されています。

特に、自分が住んでいた家(マイホーム)を売った場合には有利な制度が多いので、条件に合うかどうかをしっかり確認しましょう。

代表的な特別なルールとしては、次のようなものがあります。

  • 3,000万円の特別控除: マイホームを売った場合、持っていた期間の長さに関係なく、儲け(譲渡所得)から最高で3,000万円まで引いてくれるという、とても大きな特別ルールです。これを使えば、儲けが3,000万円以下だったら税金はかかりません。離婚で夫婦のどちらかが家を出てしまっていても、いくつかの条件を満たせば使える場合があります。

出典)No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁

  • 特定のマイホームを買い換えたときの特例: マイホームを売って新しいマイホームに買い替える場合、いくつかの条件を満たせば、売った年に儲けにかかるはずだった税金を、将来に先送りできる制度です。

出典)No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁

  • マイホームを売ったときの軽減税率の特例: 10年より長く持っていたマイホームを売った場合、3,000万円の特別控除を使った後の儲けに対して、さらに低い税率が適用される制度です(儲けが6,000万円以下の部分について、所得税10.21%、住民税4%)。

出典)No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁

これらの特別なルールを使うためには、「確定申告(かくていしんこく)」という税金の手続きが必要になります。

また、それぞれ細かい条件があるので、税務署や税理士に相談して、自分の状況に合った一番良い方法を選ぶことが大切です。

離婚するときのマンション売却と税金などについてのQ&A

離婚するときのマンション売却と、それに伴うお金の動きやタイミングについては、色々な疑問が出てくるでしょう。ここでは、よくある質問とその基本的な考え方について説明します。

Q1. 財産の分け前としてマンションを相手に渡した場合、税金はかかりますか?

A1. 財産を分けるために不動産を渡す側の人には、渡したときのマンションの価値が、その不動産を買ったときにかかったお金より高い場合、基本的には譲渡所得税という税金がかかります。

ただし、住んでいた家の3,000万円の特別控除のような特別なルールを使える場合があります。

もらう側の人には、普通は贈与税や不動産取得税といった税金はかかりません。

Q2. 住宅ローン控除(住宅ローンを組んでいる人が受けられる税金の割引)を受けていましたが、売ったらどうなりますか?

A2. マンションを売ると、その年からの住宅ローン控除は受けられなくなります。

また、売れた年に3,000万円の特別控除のような特別なルールを使う場合は、その年とその前後の2年間は新しく住宅ローン控除を受けることができないなどのルールがあるので注意が必要です。

Q3. 二人の名義(共有名義)のマンションを売った場合、3,000万円の特別控除はそれぞれ使えますか?

A3. はい、夫婦それぞれ自分の持ち分に応じて3,000万円の特別控除を使える可能性があります。

ただし、夫婦それぞれが使えるための条件を満たしている必要があります。

Q4. 離婚した後、家を売って手に入ったお金はどうなるの?
A4. 離婚した後に家(マンション)を売って手に入ったお金は、まず売るためにかかった色々なお金(不動産会社への仲介手数料など)の支払いに使われます。

次に、住宅ローンが残っていれば、その返済に使います。それでもお金が残った場合、その残った金額が夫婦で財産を分ける対象になります。

財産の分け方は、基本的には夫婦で半分ずつにすることが多いですが、これは夫婦の話し合いや約束によって変わることもあります。

売ったお金をどう分けるかについては、後でトラブルにならないように、「離婚協議書」のような紙に書いてハッキリさせておくことがとても大切です。

また、売って利益(譲渡所得)が出た場合には税金がかかることもあるので、その点も考えておきましょう。

Q5. 離婚する前と離婚した後、家を売るのはどっちが良いですか?

A5. どちらが良いかは、一概には言えません。それぞれのタイミングに良い点と少し困る点があります。

  • 離婚する前に売る場合
    • 良い点:まだ夫婦として協力しやすく、手続きがスムーズに進むかもしれません。そして、売ったお金を現金にして財産を分けやすくなります。
    • 少し困る点:気持ちが大変な時期に売る活動をしないといけないことや、売る条件などで夫婦の意見が合わなくなるリスクがあります。
  • 離婚した後に売る場合
    • 良い点:財産の分け方などが決まった後で、落ち着いて売る活動を進められます。
    • 少し困る点:元パートナーに協力してもらいにくくなったり、連絡が取りづらくなったりする可能性があります。また、住宅ローンが残っている場合、どちらがどうやって支払いを続けるかなどの問題が出てくることもあります。

一番良いタイミングは、ご夫婦の関係や住宅ローンの状態、お子さんがいるかどうかなど、それぞれの状況によって違います。

それぞれの良い点・困る点をよく比べて考えて、場合によっては弁護士さんのような専門家にも相談しながら、自分たちにとって一番良いタイミングを選ぶことが大切です。

税金やお金に関する問題はとても複雑で、一人一人の状況によって扱いが違うことも少なくありません。

分からないことや心配なことがある場合は、自分で判断せずに、必ず税務署や税理士、弁護士のような専門家に相談するようにしましょう。

まとめ

この記事では、離婚という大きな決断をするときに必要なマンション売却について、準備の段階から売却が終わるまでの具体的な手順、住宅ローンが残っている場合の対処法、複雑なお金や税金の問題、そしてお互いが納得できる財産の分け方まで、知っておくべき「全ての知識」を幅広く説明してきました。

離婚するときのマンション売却は、法律の手続きやお金の問題がたくさんあって、心にも大きな負担がかかるものです。

しかし、正しい知識を身につけて、1つ1つのステップを丁寧に踏んでいけば、不安を減らして、より良い条件で、そして何よりも後で「こうすればよかった」と後悔しないように、大切な財産を整理することができます。

特に大切なのは、「自分のマンションが今どんな状態か正確に知ること」、「元パートナーと落ち着いてきちんと話し合うこと」、「信頼できる不動産会社や、必要なら弁護士・税理士のような専門家の助けを積極的に借りること」です。

この記事で紹介した情報が、売却の全体像を理解して、具体的にどう動けばいいか計画を立てる上で、少しでもお役に立てば嬉しいです。

マンションを売ることは、離婚した後の新しい生活を始めるための大事なプロセスの一つです。

気持ちが揺れ動きやすい時期ではありますが、将来のことを考えて、落ち着いて判断するようにしてください。

この記事で得た知識を力に変えて、あなたが納得できる形でマンション売却を終えられ、穏やかな気持ちで次の一歩を踏み出せることを心から願っています。

もし、個別の状況でどうすればいいか迷ったり、専門家のアドバイスが必要だと感じたりした場合には、決して一人で抱え込まずに、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

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ハウスドゥは不動産を売る・買う・活用する・建てる・リフォームするなど、全国の店舗ネットワークとテクノロジーを活用し、不動産に関する様々なサービスをワンストップで提供しています。

不動産情報のオープン化の推進と、お客様のニーズに対する不動産ソリューションサービスを提供する「不動産サービスメーカー」として、様々な不動産関連ビジネスを展開しています。

店舗数 No.1 不動産売買仲介専門
フランチャイズ
※2
※2 ハウスドゥは不動産売買仲介専門フランチャイズで店舗数第1位です。「ビジネスチャンス」(2023年12月22日発行-2024年2月号)より。

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