家の権利書が見つからなくて焦っていませんか?
「再発行できない」と聞いて、売却や相続ができないのではと不安になる方も多いです。
でも安心してください。権利書を紛失しても、所有権そのものは消えません。
実は「事前通知制度」や「本人確認情報」という代替手続きで解決可能です。
この記事では、紛失時の具体的な対処法や費用、悪用リスクへの対策について、法務省の公式見解も交えて分かりやすく解説します。
この記事のポイント
- 権利書は再発行不可だが、所有権は消えず手続きでカバー可能
- 売却時は「司法書士による本人確認」、費用節約なら「事前通知」
- 代替手続きの費用相場は5万〜10万円、期間は即日〜1ヶ月
- 実印もセットで紛失していない限り、悪用のリスクは低い
目次
家・土地の権利書を紛失しても再発行は不可!まずは「所有権」の確認を

権利書が見当たらないと、家を売れないのではと心配になりますよね。
この章を読めば、権利書の正体と、なくても大丈夫な理由がわかります。
- 探している書類はこれかも?権利書(登記済証・登記識別情報)の見本
- 権利書をなくしても「家や土地の所有権」はなくならない
まずは冷静に状況を整理していきましょう。
探している書類はこれかも?権利書(登記済証・登記識別情報)の見本
まず、あなたが探すべき書類の形を再確認しましょう。
作成された時期によって、大きく分けて2種類のタイプが存在します。
- 登記済証(従来の権利書)
- 平成17年(2005年)頃までに発行されたもの。
- 厚手の和紙のような紙に「登記済」という赤いハンコが押されており、表紙がついた冊子になっていることが多いです。
- 登記識別情報(現在の権利書)
- 平成17年以降に順次切り替わったもの。
- A4サイズの緑色の用紙で、下部に「パスワード(英数字)」が隠された目隠しシールが貼られています。
もし家の中を探してもこれらが見つからない場合でも、法務局で再発行をすることは法律上できません。
これは、なりすましによる詐欺や二重発行などのトラブルを未然に防ぐため、不動産登記法で厳しく定められているからです。
参考:法務局『登記識別情報を紛失したのですが,どうしたらよいのですか?』(PDF)
権利書をなくしても「家や土地の所有権」はなくならない
最も重要なことは、「権利書=所有権そのもの」ではないということです。
権利書はあくまで「あなたがその不動産の持ち主であることを証明するためのカギ」のような存在にすぎません。
したがって、たとえ火事で焼失したり、誤ってシュレッダーにかけてしまったりしても、法務局にある登記簿上の記録が消えるわけではありません。
あなたの家はあなたのもののままですので、まずは安心してください。
権利書がない状態でも、法律で定められた「代替手段」を使えば、問題なく売却や名義変更を行うことができます。
権利書なしで家・土地の「売却」や「相続(名義変更)」をする手続き

再発行できないなら、具体的にどう手続きすればいいのか悩みますよね。
状況に合わせて選べる、3つの主要な解決策を詳しく解説します。
- 費用を抑えたいなら「事前通知制度」
- 急いで手続きしたいなら「司法書士による本人確認情報」
- 親が死亡して権利書が見当たらない場合の相続時の注意点
あなたに最適な方法を見つけてください。
費用を抑えたいなら「事前通知制度」
時間に余裕があり、できるだけ費用をかけたくない場合に利用されるのが「事前通知制度」です。
これは、本来提出すべき権利書がない状態で登記の申請をした後、法務局から本人宛てに「本当にあなたが申請しましたか?」という確認書類が郵送される仕組みです。
届いた書類に実印を押して、期限内(通常2週間以内)に返送すれば、権利書があるのと同じように手続きが完了します。
この方法の最大のメリットは、実費(切手代など)以外に特別な手数料がかからないことです。
ただし、郵送のやり取りが発生するため、手続き完了までに日数がかかる点には注意が必要です。
急いで手続きしたいなら「司法書士による本人確認情報」
不動産の売却において最も一般的に利用されるのが、この「司法書士による本人確認情報の提供」です。
不動産の決済日(引き渡し日)に合わせて確実に手続きを完了させる必要があるため、時間のかかる事前通知制度は敬遠される傾向にあります。
具体的な流れとしては、司法書士と直接面談を行い、運転免許証などの身分証明書を提示します。
司法書士が「間違いなく本人であり、売却の意思がある」と判断した場合に作成される報告書を、権利書の代わりとして法務局に提出します。
即効性があり確実ですが、専門家の責任が重いため、別途手数料が発生します。
親が死亡して権利書が見当たらない場合の相続時の注意点
「親が亡くなり実家を相続することになったが、権利書が見つからない」というケースもあるでしょう。
実は、通常の相続登記(名義変更)であれば、亡くなった方の権利書は原則として不要です。
相続登記は、戸籍謄本などで「相続人であること」を証明すれば手続きができるため、権利書の提出義務がありません。
ただし、「親が生前に売却契約をしていたが、引き渡し前に亡くなった」といった特殊なケースでは必要になることもあります。
権利書紛失時の手続きにかかる費用(金額)相場と期間

手続きをするにあたって、余計な出費がいくらになるか気になりますね。
代替手続きにかかる具体的な金額と、完了までの期間を比較します。
- 司法書士に依頼する場合の手数料は5万〜10万円
- 「事前通知制度」は安く済むが2週間以上かかる
予算とスケジュールを確認しましょう。
司法書士に依頼する場合の手数料は5万〜10万円
「司法書士による本人確認情報」を利用する場合、通常の登記費用とは別に、本人確認情報作成の手数料がかかります。相場としては5万円〜10万円程度(税別)が一般的です。
金額に幅があるのは、不動産の価格や権利関係の複雑さによって司法書士のリスク負担が変わるためです。
決して安い金額ではありませんが、確実に、そしてスケジュール通りに不動産売却を進めるための「必要経費」として捉える必要があります。
「事前通知制度」は安く済むが2週間以上かかる
費用と期間の違いを比較表にまとめました。
| 項目 | 事前通知制度 | 司法書士による本人確認 |
| 費用 | 無料(切手代等のみ) | 5万円〜10万円程度 |
| 期間 | 2週間〜1ヶ月 | 即日(面談後、決済日当日) |
| 向いている人 | 時間に余裕がある人 親族間での贈与など | 不動産売却をする人 急いで手続きしたい人 |
事前通知制度はコスト面で優秀ですが、法務局からの郵便を受け取れなかったり、返送を忘れたりすると手続きが却下されてしまいます。
家の権利書を紛失したら悪用される?リスクと防止策
権利証を紛失しても直ちに悪用されるわけではありませんが、実印等の管理状況によってリスクが大きく異なります。
- 権利書だけで勝手に名義変更される可能性は低い
- 実印や印鑑証明書もセットで紛失した場合はすぐ警察へ
正しい防犯知識を身につけましょう。
権利書だけで勝手に名義変更される可能性は低い
ドラマなどの影響で「権利書を盗まれた=家を乗っ取られる」というイメージがあるかもしれませんが、実際はそこまで簡単ではありません。
不動産の名義変更には、権利書のほかに以下の書類が必須だからです。
- 所有者の実印
- 発行から3ヶ月以内の印鑑証明書
つまり、権利書だけを拾った第三者が、勝手にあなたの家を売却したり名義を変えたりすることは不可能です。
過度に恐れる必要はありませんが、悪用されないよう管理には引き続き注意が必要です。
実印や印鑑証明書もセットで紛失した場合はすぐ警察へ
本当に危険なのは、空き巣などで「権利書・実印・印鑑カード(または印鑑証明書)」をセットで盗まれた場合です。
この3点が揃ってしまうと、本人になりすまして勝手に登記を変更されるリスクが格段に高まります。
もしセットで紛失したことに気づいたら、直ちに以下の行動をとってください。
- 役所へ行く: 実印の印鑑登録を廃止(無効化)する。
- 警察へ行く: 盗難届または紛失届を提出する。
- 法務局へ行く: 「不正登記防止申出」を行い、3ヶ月間登記をロックしてもらう。
また、登記識別情報(パスワード形式)の場合は、パスワード自体を無効にする「失効の申出」も有効です。
参考:法務省『新不動産登記法Q&A(Q15:登記識別情報が盗まれた場合)』
まとめ:家の権利書を紛失しても所有権は消えないので安心を
家の権利書(登記済証・登記識別情報)は、いかなる理由があっても再発行はできません。
しかし、権利書を失くしたからといって、家や土地の所有権を失うわけではないので安心してください。
売却や名義変更が必要な場合は、「事前通知制度」や「司法書士による本人確認情報」といった正規の代替手続きが用意されています。
まずは焦らず、手元に実印などがあるかを確認し、状況に合わせて司法書士などの専門家に相談することから始めましょう。
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