
「離婚が決まり家の売却が必要だけど、何から始めればいいか分からない…」「住宅ローンや税金で損をしたり、相手と揉めたりするのは絶対に避けたい」と、大きな不安を抱えていませんか?そのお悩み、よく分かります。
知識がないまま手続きを進めると、財産分与で大きく損をしたり、売却自体が滞ったりするケースは少なくありません。
しかしご安心ください。
離婚時の家の売却は、正しい手順と知識さえ押さえれば、円満かつ有利に進めることが可能です。
この記事では、離婚で家を売却するための全手順を6つのステップで分かりやすく解説します。
さらに、残ったローンや税金で損をしないための具体的な方法も、専門家の視点からお伝えします。
まずはこの記事で安全な進め方を学び、安心して新しい生活への第一歩を踏み出しましょう。
この記事のポイント
- 離婚時の家の売却手順を6つのステップで図解します。
- 住宅ローンが残っている場合の損をしない対処法が分かります。
- 財産分与の計算方法や、家の売却にかかる税金の注意点が分かります。
- 家が売れない場合の具体的な対策を知ることができます。
目次
- 1 離婚で家の売却を考え始めたら|まず最初に確認すべき2つのこと
- 2 離婚時の家の売却手順!何から始める?
- 3 住宅ローンが残っている家の売却はどうする?オーバーローンでも売れる?
- 4 離婚で家を売却したいのに売れない…考えられる原因と対処法
- 5 離婚時の家の財産分与|売却益の分け方と計算方法を分かりやすく解説
- 6 離婚時の家の売却でかかる税金は?知っておきたい控除と注意点
- 7 離婚で家を売却するベストなタイミングは?離婚前・後のメリットとデメリット
- 8 離婚時の家の売却で失敗しないためのポイント
- 9 離婚時の家の売却に関するよくある質問
- 10 まとめ:離婚時の家の売却は、冷静な準備と専門家への相談が成功のカギ
離婚で家の売却を考え始めたら|まず最初に確認すべき2つのこと
「家の売却、何から考えればいいの?」とお悩みですね。
大丈夫です。まず初めに確認すべき2つのことを押さえましょう。
- 夫婦間での売却の意思を固める
- 家がいくらで売れそうか相場を把握する
それでは、一つずつ見ていきましょう。
夫婦間での売却の意思を固める
離婚時に家を売却するには、まず夫婦の間で「家を売却する」という意思を固めることが絶対的なスタートラインです。
たとえ家の名義がどちらか一方でも、婚姻中に築いた財産(共有財産)とみなされるため、両者の合意がなければ売却手続きを進められません。
もし意見がまとまらないまま話を進めると、後々「売却には同意していない」といったトラブルに発展し、計画が白紙に戻る可能性があります。
売却の方針が決まったら、後のトラブルを避けるためにも、合意内容を「離婚協議書」などの書面に残しておくことを強くおすすめします。
この最初の合意形成が、円満な売却への最も重要なポイントです。
家がいくらで売れそうか相場を把握する
夫婦間で売却の意思が固まったら、次に「自分たちの家がいくらで売れそうか」という相場を把握しましょう。
家の売却価格は、その後の財産分与の金額や、住宅ローンを完済できるかを左右する非常に重要な情報です。
おおよその相場は、SUUMOやLIFULL HOME’Sといった不動産ポータルサイトで、近隣の似たような物件の売出価格を調べることで把握できます。
しかし、より正確な価格を知るためには、不動産会社に「査定」を依頼するのが最も確実です。
査定は無料で依頼できる場合がほとんどなので、複数の会社に依頼して査定額を比較検討しましょう。この査定額が、今後の資金計画の土台となります。
離婚時の家の売却手順!何から始める?
「売却の意思は固まったけど、実際の手順は?」と不安ですね。
ご安心ください。売却は6つの手順に沿って進めれば大丈夫です。
- 住宅ローンの残高を確認する
- 不動産会社に家の査定を依頼する
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 家の売却活動を開始する
- 買主と売買契約を締結する
- 決済・家の引き渡し
ここから売却の全体像を詳しく解説します。
住宅ローンの残高を確認する
家の売却手続きで最初にすべきことは、住宅ローンの残高がいくら残っているかを正確に把握することです。
金融機関から発行される「残高証明書」や「返済予定表」で確認できます。
このローン残高と、後述する家の査定額を比較することで、売却後に手元にお金が残るのか(アンダーローン)、あるいは売却してもローンが残ってしまうのか(オーバーローン)が判明します。
この結果によって今後の進め方が大きく変わるため、必ず最初に確認しましょう。
不動産会社に家の査定を依頼する
ローン残高を把握したら、次に不動産会社に家の「査定」を依頼し、いくらで売れそうか専門的な視点から価格を出してもらいます。
不動産会社を選ぶ際は、1社だけでなく、必ず複数の会社に査定を依頼してください。
なぜなら、会社によって査定額に数十万円、時には数百万円の差が出ることがあるからです。
また、査定額の根拠を丁寧に説明してくれるか、離婚案件の取り扱い経験が豊富かどうかも、信頼できる会社を見極める重要なポイントになります。
最近では、一度の入力で複数の会社に一括で査定を依頼できるオンラインサービスもあり、便利です。
不動産会社と媒介契約を結ぶ
査定額や担当者の対応などを比較し、売却を任せたい不動産会社が決まったら、その会社と「媒介契約」を結びます。
これは「あなたの家の売却活動を、この不動産会社に依頼します」という正式な契約です。
媒介契約には主に3つの種類(専属専任媒介、専任媒介、一般媒介)があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
担当者から説明を受け、ご自身の状況に最も合った契約形態を選びましょう。
この契約をもって、いよいよ本格的な売却活動がスタートします。
家の売却活動を開始する
媒介契約を結ぶと、不動産会社は自社のウェブサイトや不動産ポータルサイト(SUUMOなど)に物件情報を掲載し、購入希望者を探し始めます。
購入を検討している人が現れると、実際に家を見学する「内覧」の対応が必要になります。
家の印象は売却価格や売却スピードに大きく影響するため、内覧前には掃除や整理整頓を心がけ、部屋を明るく見せるなどの工夫をすると良いでしょう。
夫婦で協力し、良い印象を与えられるように準備することが大切です。
買主と売買契約を締結する
購入希望者が見つかり、売却価格や引き渡しの時期などの条件交渉がまとまったら、「売買契約」を締結します。
この契約は、売主(あなた方夫婦)と買主の間で「この条件で間違いなく売買します」という約束を法的に固めるためのものです。
契約時には、買主から手付金(売買価格の5〜10%が相場)を受け取ります。
一度契約を結ぶと、自己都合で簡単にキャンセルすることはできなくなるため、契約書の内容は隅々まで確認し、不明な点があれば必ず質問しましょう。
決済・家の引き渡し
売買契約で定めた引き渡し日に、売却代金の残金を受け取り(決済)、家の鍵を買主に渡して所有権を移転します。
これで売却手続きはすべて完了です。
決済は、銀行などの金融機関で行われることが多く、司法書士の立ち会いのもと、住宅ローンの完済手続きや所有権移転の登記申請を同時に行います。
全ての支払いや手続きが無事に完了し、売却代金から諸費用を差し引いた金額が、最終的に財産分与の対象となります。
住宅ローンが残っている家の売却はどうする?オーバーローンでも売れる?
「ローンが残っている家、本当に売れるの?」と心配ですよね。
大丈夫です。2つのパターンとそれぞれの対処法を知れば安心です。
- まずは「アンダーローン」か「オーバーローン」かを確認
- アンダーローン(売却益が見込める)の場合
- オーバーローン(売却損が出る)の場合の対処法
詳しく見ていきましょう。
まずは「アンダーローン」か「オーバーローン」かを確認
住宅ローンが残っている家を売却する際、最も重要なのが**「家の売却価格が、ローンの残高を上回るか、下回るか」**という点です。この状態を把握することが、全ての戦略の基本となります。
- アンダーローン:家の売却価格が、住宅ローンの残高を上回る状態。
- オーバーローン:家の売却価格が、住宅ローンの残高を下回る状態。
不動産会社の査定額と、ご自身のローン残高を照らし合わせ、どちらの状態に当てはまるのかを正確に確認しましょう。
アンダーローン(売却益が見込める)の場合
アンダーローンは、売却がスムーズに進みやすい理想的な状態です。家の売却代金で住宅ローンをすべて返済しても、手元にお金が残るためです。
この場合の手順はシンプルです。まず、家の売却で得た代金を使って、金融機関に住宅ローンを一括で完済します。そして、売却にかかった仲介手数料などの諸費用を差し引き、残った金額を夫婦の財産分与の対象として分け合うことになります。特別な手続きは必要なく、一般的な売却の流れで進めることが可能です。
オーバーローン(売却損が出る)の場合の対処法
一方で、オーバーローンは注意が必要な状態です。家の売却代金だけではローンを完済できないため、不足分をどう工面するかという問題が発生します。金融機関の抵当権(※)を抹消しない限り家は売却できないため、ローンは必ず完済しなければなりません。
※抵当権:ローン返済が滞った場合に、金融機関がその不動産を差し押さえる権利。
この場合の対処法は、主に以下の2つです。
自己資金で不足分を補う
一つ目は、預貯金などの自己資金で、売却代金で足りない分を補う方法です。例えば、ローンが2,000万円残っていて、家が1,800万円でしか売れない場合、差額の200万円を自己資金で用意して完済します。この不足分を夫婦のどちらが、どのような割合で負担するのかを事前にしっかりと話し合っておく必要があります。
任意売却を検討する
自己資金で不足分を用意できない場合の選択肢が「任意売却」です。
これは、借入先である金融機関の合意を得た上で、ローンが残ることを承知で家を売却する特別な方法です。
競売にかけられるよりも市場価格に近い値段で売れる可能性が高く、周囲に事情を知られにくいというメリットがあります。
ただし、手続きが複雑で、専門的な知識も必要となるため、任意売却を検討する場合は、必ず経験豊富な不動産会社や弁護士などの専門家に相談しましょう。
離婚で家を売却したいのに売れない…考えられる原因と対処法
「売却活動を始めたのに、全く売れない…」と焦りますよね。
大丈夫です。売れない原因と具体的な対策を一緒に見ていきましょう。
- 家が売れない3つの主な原因(価格・時期・物件の状態)
- 売出価格や売却の条件を見直す
- 最終手段としての「不動産買取」も検討する
解決策を一つずつ解説します。
家が売れない3つの主な原因(価格・時期・物件の状態)
売却活動が長期化してしまう場合、必ずどこかに原因があります。まずは冷静に、以下の3つのポイントに当てはまっていないか確認してみましょう。
- 価格設定が相場より高い
最もよくある原因が、売出価格が周辺の相場よりも高く設定されているケースです。
購入希望者は、近隣の類似物件と比較検討するのが一般的です。そのため、価格に割高感があれば、内覧の候補からさえ外されてしまいます。
- 売却の時期が悪い
不動産市場にも、売買が活発になる時期(春の引越しシーズンなど)と、動きが鈍くなる時期があります。
また、経済全体の動向によって市場が冷え込んでいるタイミングでは、買い手が見つかりにくくなることも事実です。
- 物件の状態が悪い
内覧時の印象は非常に重要です。室内が散らかっていたり、水回りなどの清掃が行き届いていなかったりすると、購入希望者の意欲は大きく下がってしまいます。
目に見えるひび割れや雨漏りの跡など、修繕が必要な箇所が放置されている場合も、売却が難しくなる大きな要因です。
売出価格や売却の条件を見直す
原因が特定できたら、次のような対策を検討しましょう。
最も効果的なのは売出価格の見直しです。不動産会社の担当者と相談し、最近の成約事例などを参考に、購入希望者の興味を引く現実的な価格に再設定できないか検討します。
また、物件の状態が原因であれば、専門業者によるハウスクリーニングを入れたり、不要な家具を処分して部屋を広く見せたりするだけでも、内覧時の印象は大きく改善されます。
一部の修繕に費用がかかる場合でも、その分を価格に反映させるなどの柔軟な対応が、売却成功の鍵となります。
最終手段としての「不動産買取」も検討する
「とにかく早く売って、財産分与を終わらせたい」「夫婦間でこれ以上やり取りをしたくない」といった場合は、不動産会社に直接家を買い取ってもらう「不動産買取」も有効な選択肢です。
不動産買取には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット | |
不動産買取 | ・売却までのスピードが圧倒的に速い ・内覧対応などが不要で手間がかからない ・周囲に知られずに売却できる |
・売却価格が市場価格の6〜8割程度になることが多い |
売却価格は相場より低くなる傾向にありますが、買主を探す必要がないため、現金化までのスピードが圧倒的に速いのが最大の魅力です。
離婚協議を長引かせたくない場合や、なかなか買い手が見つからない場合の「最終手段」として、検討する価値は十分にあります。
離婚時の家の財産分与|売却益の分け方と計算方法を分かりやすく解説
「家の売却益、どうやって分ければいい?」と悩みますよね。
大丈夫です。財産分与の基本ルールと計算方法を解説します。
- 財産分与の基本は「2分の1」ルール
- 家の名義は財産分与に関係ある?
- 【シミュレーション】家の売却益の計算方法
具体的に確認していきましょう。
財産分与の基本は「2分の1」ルール
離婚における財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた財産(共有財産)を、離婚時に公平に分け合うことを指します。
その際の基本的な考え方が**「2分の1ルール」**です。これは、財産を築いた貢献度は夫婦それぞれ同等であると考え、共有財産を半分ずつ(2分の1ずつ)に分けるというものです。どちらかの収入が多かったり、専業主婦(主夫)であったりしても、この原則は変わりません。
家の売却によって得られた利益も、もちろんこの共有財産に含まれるため、基本的には夫婦で均等に分けることになります。
家の名義は財産分与に関係ある?
結論から言うと、家の名義が夫婦のどちらか一方になっていても、財産分与の原則には影響しません。
たとえ家の名義が夫(または妻)の単独名義であっても、その購入資金が婚姻期間中の収入から賄われていたのであれば、それは「共有財産」です。なぜなら、名義に関わらず、夫婦が協力して得た財産だと法的に解釈されるためです。
ただし、注意すべきケースもあります。例えば、家の購入時の頭金が、どちらか一方の親からの贈与や、結婚前に貯めていた個人の預金から支払われた場合、その金額分は個人の「特有財産」とみなされ、財産分与の対象から除外される可能性があります。
【シミュレーション】家の売却益の計算方法
では、実際に家の売却で得たお金は、どのように計算して分けるのでしょうか。重要なのは、売却価格そのものではなく、そこから経費やローンを差し引いた「手元に残ったお金」を分けるという点です。
財産分与の対象額 = 売却価格 – 諸費用 – 住宅ローン残高
具体的な例で見てみましょう。
【シミュレーション条件】
- 家の売却価格:3,000万円
- 売却の諸費用(仲介手数料など):150万円
- 住宅ローン残高:2,000万円
【計算式】
3,000万円(売却価格) – 150万円(諸費用) – 2,000万円(ローン残高) = 850万円
この場合、財産分与の対象となる金額は850万円です。
「2分の1ルール」に基づくと、夫婦それぞれが受け取る金額は以下のようになります。
850万円 ÷ 2 = 425万円
このように、実際に手元に残った金額を基準に計算することで、公平な財産分与が可能になります。
離婚時の家の売却でかかる税金は?知っておきたい控除と注意点
「家の売却で、税金はいくらかかるの?」と気になりますよね。
大丈夫です。税金の基本と、損しないための控除を解説します。
- 家の売却で利益が出たら「譲渡所得税」がかかる
- 税金の負担を減らす「3,000万円の特別控除」とは
- 【要注意】財産分与の方法によっては「贈与税」が発生するケース
賢い知識を身につけましょう。
家の売却で利益が出たら「譲渡所得税」がかかる
家の売却によって「利益(儲け)」が出た場合にのみ、その利益に対して「譲渡所得税」という税金がかかります。
売却価格そのものではなく、あくまで利益に対して課税されるのがポイントです。
利益(譲渡所得)は、以下の計算式で算出されます。
譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 譲渡費用)
- 取得費:その家を購入したときにかかった代金や費用のこと。
- 譲渡費用:今回の売却でかかった仲介手数料などの費用のこと。
例えば、3,000万円で売れた家でも、購入時の価格や経費を差し引いた結果、利益が出ていなければ譲渡所得税はかかりません。逆に、この計算式でプラスになった金額が課税の対象となります。
税金の負担を減らす「3,000万円の特別控除」とは
もし譲渡所得税がかかる場合でも、税金の負担を大幅に軽減できる「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」という制度があります。
これは、自分が住んでいた家を売却した場合、利益(譲渡所得)から最高3,000万円までを差し引くことができるという非常に強力な特例です。
例えば、家の売却による利益が2,000万円だった場合、この控除を適用すれば課税対象となる利益は0円になり、結果として譲渡所得税はかかりません。利益が3,000万円を超えた部分にのみ、税金がかかる仕組みです。
離婚時の売却でもこの特例は利用できますが、「住まなくなった日から3年以内」などのいくつかの適用条件があるため、不動産会社の担当者によく確認しましょう。
【要注意】財産分与の方法によっては「贈与税」が発生するケース
離婚時の財産分与は、夫婦の共有財産を清算する手続きなので、原則として「贈与税」はかかりません。
しかし、注意が必要なのは、財産分与でどちらか一方が受け取る財産が、社会通念上多すぎると判断された場合です。例えば、財産の大部分を占める家をどちらか一方が全て受け取り、もう一方はほとんど財産を受け取らない、といったケースです。
この場合、適正な割合(通常は2分の1)を大きく超えた部分が「贈与」とみなされ、財産を受け取った側に高額な贈与税が課せられる可能性があります。
このような事態を避けるためにも、最も安全なのは家を第三者に売却して現金化し、その現金を公平に分ける方法です。もし家を現物のまま分与する場合は、税理士などの専門家に事前に相談することをおすすめします。
離婚で家を売却するベストなタイミングは?離婚前・後のメリットとデメリット
「売るなら離婚の前?後?どっちがいい?」と迷いますよね。
大丈夫です。それぞれの利点と欠点を理解して判断しましょう。
- 離婚前に家を売却する場合
- 離婚後に家を売却する場合
- おすすめは「離婚前の売却」か「離婚と同時進行」
最適な時期を見つけましょう。
離婚前に家を売却する場合
離婚届を提出する前に家の売却を進めるケースです。手続き上、まだ夫婦であるため、協力しやすいという大きな利点があります。
メリット | デメリット |
・夫婦で協力しやすく、手続きがスムーズに進みやすい ・売却益の清算を離婚の財産分与と同時に行える ・税金の控除(3,000万円特別控除)を夫婦それぞれが利用しやすい |
・離婚協議と売却活動が重なり、精神的な負担が大きい ・内覧対応などでプライベートな事情を詮索される可能性がある |
最大のメリットは、協力体制が築きやすいことです。家の売却には、契約などで夫婦双方の署名や捺印が必要な場面が多くあります。離婚前であれば連絡も取りやすく、手続きの遅延リスクを最小限に抑えられます。
離婚後に家を売却する場合
離婚が成立した後に、元夫婦として家の売却を進めるケースです。離婚問題が一段落した状態で、落ち着いて売却活動に専念できます。
メリット | デメリット |
・離婚問題と切り離し、精神的に落ち着いて進められる<br>・財産分与の条件が離婚時に確定しているため、お金の分配で揉めにくい | ・相手と連絡が取れなくなったり、協力が得られなくなったりするリスクが非常に高い<br>・手続きが煩雑になることがある<br>・税金の控除が使えなくなる可能性がある |
最大のデメリットは、相手の協力が得られなくなるリスクです。離婚後は関係が悪化したり、新しい生活が始まったりして、売却手続きへの協力を拒否されるケースが少なくありません。これが原因で、売却が暗礁に乗り上げてしまうこともあります。
おすすめは「離婚前の売却」か「離婚と同時進行」
上記のメリット・デメリットを比較すると、可能であれば「離婚届を提出する前の売却」または「離婚協議と同時進行での売却」をおすすめします。
理由はシンプルで、離婚後では相手が非協力的になるリスクが非常に高く、売却をスムーズに進める上で致命的な障害となり得るからです。
精神的な負担は大きいかもしれませんが、協力体制が整っている離婚前に売却を完了させる方が、最終的には金銭的にも時間的にもメリットが大きくなる可能性が高いと言えます。
理想的な進め方としては、離婚協議の中で家の売却方針と売却益の分配方法を固め、その合意内容を離婚協議書に明記します。
その上で、離婚成立前に売却活動を始め、売却の目処が立ったタイミングで離婚届を提出するという流れです。
これにより、協力関係を維持したまま、円満な売却と新しい生活のスタートを両立させることができます。
離婚時の家の売却で失敗しないためのポイント
「絶対に失敗したくない…」と強く思いますよね。
大丈夫です。後悔しないために押さえるべき3つのポイントがあります。
- 売却条件や財産分与は必ず書面に残す
- 離婚案件に詳しい不動産会社を選ぶ
- 一人で抱え込まず専門家にも相談する
最後の確認をしていきましょう。
売却条件や財産分与は必ず書面に残す
離婚時の家の売却で最も避けたいのが、後になって「言った・言わない」のトラブルに発展することです。
口約束は非常に危険であり、記憶違いや解釈の違いから、深刻な争いにつながる可能性があります。
そうした事態を防ぐために、夫婦間で合意した内容は、必ず「離婚協議書」のような法的な書面に明記しておきましょう。
特に以下の項目は、明確に記載することが重要です。
- 家を売却することへの双方の合意
- 売却益の分配方法(例:夫婦で2分の1ずつ)
- オーバーローンの場合、不足分を誰がどう負担するか
- 売却活動における主な窓口担当者
さらに、この離婚協議書を「公正証書」として作成しておけば、法的な強制力を持つため、約束が守られないといったリスクを最大限に減らすことができます。
離婚案件に詳しい不動産会社を選ぶ
家の売却は不動産会社に依頼しますが、このとき「離婚案件の取り扱い経験が豊富な会社」を選ぶことが、成功への近道です。
離婚時の売却は、単なる不動産取引ではありません。
夫婦間の複雑な感情や、財産分与といった法律問題が絡み合う、特殊な状況です。
経験豊富な担当者であれば、以下のような対応が期待できます。
- 夫婦間の連絡役となり、中立的な立場で調整してくれる
- 財産分与や税金の特例など、法律面にも配慮した提案をしてくれる
- 万が一トラブルが発生しても、弁護士などと連携して冷静に対処してくれる
不動産会社に査定を依頼する際には、「離婚に伴う売却なのですが、同様の案件のご経験はありますか?」と一言質問してみるだけでも、その会社の専門性を見極めることができます。
一人で抱え込まず専門家にも相談する
離婚と家の売却という2つの大きな問題を、一人ですべて抱え込む必要はありません。
分からないことや不安なことがあれば、ためらわずに専門家の力を借りましょう。
それぞれの専門家の役割は以下の通りです。
相談相手 | 主な役割 |
弁護士 | 財産分与で揉めている場合や、離婚協議書・公正証書の作成を依頼したい場合 |
司法書士 | 家の所有権移転登記など、法的な手続きを依頼したい場合 |
税理士 | 税金の計算が複雑な場合や、贈与税などのリスクについて相談したい場合 |
不動産会社 | 家の査定や売却活動全般を依頼したい場合 |
専門家への相談は費用がかかることもありますが、それは安心と確実性を手に入れるための「投資」です。
間違った判断で大きな損をしてしまう前に、適切な専門家に相談し、万全の体制で新しい生活への準備を進めましょう。
離婚時の家の売却に関するよくある質問
「他にも細かい疑問がたくさん…」と不安が残りますよね。
大丈夫です。よくある質問にQ&A形式で分かりやすくお答えします。
- 相手が家の売却に協力してくれません。どうすればいいですか?
- 売却にかかる費用は誰が負担しますか?
最後の不安を解消しましょう。
Q. 相手が家の売却に協力してくれません。どうすればいいですか?
A.まずは、なぜ協力してくれないのか理由を冷静に話し合うことが第一歩です。
感情的な問題なのか、売却価格に不満があるのかなど、原因によって対処法は異なります。
当人同士での解決が難しい場合は、不動産会社の担当者や弁護士といった中立的な第三者に入ってもらい、話し合いの場を設けるのが有効です。
それでも相手が正当な理由なく協力を拒否し続ける場合は、家庭裁判所に「共有物分割請求」の調停や審判を申し立てるという法的な手段もあります。
これは、裁判所の命令によって強制的に売却を進める手続きですが、時間と費用がかかるため最終手段とお考えください。
Q. 売却にかかる費用は誰が負担しますか?
A.仲介手数料や登記費用、印紙税といった売却にかかる諸費用は、一般的に家の売却代金から差し引かれます。
つまり、売却で得たお金からまず全ての経費を支払い、住宅ローンを完済した上で、最終的に手元に残った金額を財産分与のルール(通常は2分の1)に従って分け合うことになります。
この方法であれば、実質的に夫婦が共同で費用を負担する形になるため、最も公平でトラブルになりにくいでしょう。
この点も、離婚協議書に明記しておくとより安心です。
まとめ:離婚時の家の売却は、冷静な準備と専門家への相談が成功のカギ
この記事では、離婚時に家を売却するための手順や注意点について、網羅的に解説しました。
離婚に伴う家の売却は、通常の不動産売却とは異なり、法律や税金、そして夫婦間の感情といった複雑な要素が絡み合います。しかし、一つ一つの課題をクリアしていけば、決して乗り越えられない壁ではありません。
最後に、円満な売却と新しい生活へのスムーズな移行のために、特に重要なポイントを振り返ります。
- 何よりも先に、夫婦間で売却の意思を固め、書面に残すこと。
- ローン残高と家の査定額を正確に把握し、資金計画を立てること。
- 売却で損をしないために、税金の控除や法律の知識を正しく理解すること。
- 一人で抱え込まず、離婚案件に詳しい不動産会社や弁護士などの専門家に迷わず相談すること。
この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、次の一歩を踏み出すための助けとなれば幸いです。
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