地震保険における補償の範囲や度合いは、被害の程度や状況によって異なります。査定基準をある程度知っておけば、いざというときに役立つでしょう。この記事では、地震保険における査定基準や査定方法について解説します。建物と家財それぞれの査定におけるポイントや、地震保険の対応が不満な場合の対処法もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
目次
地震保険における4つの損害基準
2017年1月以降に契約した地震保険には以下にあげる4つの基準があり、いずれかに該当した場合に損害への補償がなされることが定められています。
・全損
・大半損
・小半損
・一部損
2016年12月までは、全損・半損・一部損の3基準でしたが、新しい基準では半損のなかでも大小の差があることが認められ、状況に応じて地震保険を受け取れます。
認定基準の詳細
地震保険の認定基準は、建物と家財とで別々に目安が設定されています。それぞれの認定基準を確認しておきましょう。
建物の認定基準
損害保険料率算出機構が公表している「地震保険基準料率」の情報をもとに、建物における損害の認定基準を解説します。
全損
建物における全損の損害基準と保険金支払額は、以下のとおりです。
損害基準 | 保険金支払額 |
主要構造部の損害額が建物の時価50%以上 | 建物の地震保険の保険金額の100%※時価額を限度とする |
焼失または流出した床面積が建物の延床面積の70%以上 |
消失、流出の場合に基準となるのは建物の延床面積ですが、それ以外の場合は建物の時価が損害額算出の基準です。時価の一般的な金額は、同等規模の建物で想定できる新築価格の約4分の1が最低評価となります。
大半損
建物の損害が「大半損」と判断される基準は、以下のとおりです。
損害基準 | 保険金支払額 |
主要構造部の損害額が建物の時価の40%以上50%未満 | 建物の地震保険の保険金額の60%※時価額の60%を限度とする |
焼失または流出した床面積が建物の延床面積の50%以上70%未満 |
全損と同じく、消失または流出のケースを除いて、建物の時価額を基準に損害額や保険金支払額が算出されます。
小半損
建物の損害が「小半損」と判断される基準は、以下のとおりです。
損害基準 | 保険金支払額 |
主要構造部の損害額が建物の時価の20%以上40%未満 | 建物の地震保険の保険金額の30%※時価額の30%を限度とする |
焼失または流出した床面積が建物の延床面積の20%以上50%未満 |
大半損よりも規模の小さい損害については小半損の扱いで補償されます。
一部損
建物の損害が「一部損」と判断される基準は、以下のとおりです。
損害基準 | 保険金支払額 |
主要構造部の損害額が建物の時価の3%以上20%未満 | 建物の地震保険の保険金額の5%※時価額の5%を限度とする |
建物が床上浸水または地盤面より45㎝を超える浸水を受け、損害が生じた場合で全損・大半損・小半損に至らないとき |
小半損に至らない損害について、一定の基準を満たせば一部損として保険金を受け取れます。浸水の場合、上記内容を満たす損害であれば、主要部分への汚水の浸入が考えられるため補償されます。
家財の認定基準
家財については、建物とはまた別に認定基準が設けられています。
全損
家財における全損の損害基準と保険金支払額は、以下のようになります。
損害基準 | 保険金支払額 |
損害額が家財全体の時価の80%以上 | 家財の地震保険の保険金額の100%※時価額を限度とする |
家財も建物と同じく時価額が補償額の基準となっています。家財の時価額とは、保険の対象になる家財を新品で購入した場合の金額から、使用分を消耗とみなし、差し引いた金額です。
大半損
家財の損害が「大半損」と判断される基準は、以下の通りです。
損害基準 | 保険金支払額 |
損害額が家財全体の時価の60%以上80%未満 | 家財の地震保険の保険金額の60%※時価額の60%を限度とする |
全壊と同じく、保険金額は家財の時価額に左右されます。
小半損
家財の損害が「小半損」と判断される基準は、以下のとおりです。
損害基準 | 保険金支払額 |
損害額が家財全体の時価の30%以上60%未満 | 家財の地震保険の保険金額の30%※時価額の30%を限度とする |
家財の被害が大半損に満たない場合、小半損に該当する可能性があります。
一部損
家財の損害が「一部損」と判断される基準は、以下のとおりです。
損害基準 | 保険金支払額 |
損害額が家財全体の時価の10%以上30%未満 | 家財の地震保険の保険金額の50%※時価額の5%を限度とする |
家財の場合、被害が全体の時価における10%に満たない場合、地震保険の補償対象にはなりません。
地震保険の査定方法
地震保険の査定について気になる人は多いでしょう。地震保険の査定方法は以下のとおりです。
建物の査定方法
地震保険で建物を査定する場合、柱、外壁、屋根、基礎などの、主要構造部と呼ばれる部分における損害の割合を見ます。たとえば、外壁に損害があった場合は、外壁全体から見てどの程度の割合かが基準となります。一方、門や塀、給排水設備など、主要構造部に該当しない部分にどれだけ損害があっても、補償の対象にはなりません。
家財の査定方法
家財の査定方法は、壊れた家財の数だけ、種類ごとに個別に定められた損害割合を加算して求めます。たとえば、パソコンとテレビが壊れたケースでは、それぞれの損害割合は2.5%なので、損害割合は合計5%です。この計算において損害割合が10%を超えれば一部損、30%以上になれば小半損と判断されます。
家財の分類と損害割合
先述のとおり、家財の損害においては、それぞれの家財が種類ごとに分類され、損害割合を定められています。主立った家財の分類と損害割合は以下の表のようになっています。
分類 | 品目 | 構成割合 | 最大値 |
食器陶器類 | 食器、陶器置物、食料品、調理器具等 | 1% | 5% |
電気器具類 | 冷蔵庫・洗濯機・パソコン・TV・エアコン等 | 2.5% | 20% |
家具類 | 食器棚・タンス・机・椅子・ソファー等 | 4% | 20% |
その他身の回り品 | カメラ・靴・鞄・スポーツ用品・レジャー用品等 | 2.5% | 25% |
衣類寝具類 | 衣類・寝具等 | 15% | 30% |
たとえば、家具類であれば1点で4%の損害が最大で20%まで認められます。したがって、家具類の場合は5点までが損害の認定対象です。どの項目についても同じように考え、最大で100%の損害が認められる可能性があります。
※参考:地震保険で家財を補償!具体的な補償内容を解説します!|一般社団法人日本住宅再生支援機構
建物への地震保険の査定におけるポイント
建物に関して、地震保険の査定における考え方のポイントを解説します。
鑑定人に対して主要構造部の被害を言及する
建物に関して補償されるかどうかは、主要構造部の被害の有無・程度で決まります。外壁だけでなく、軸組(柱部分)や基礎、屋根の上といった部分も抜けなくチェックすることが必要です。高い位置にある屋根や外壁は、高所カメラなどでの確認になるため、しっかり見てもらえるように鑑定人に伝えましょう。
建物全体と損害箇所の写真を用意する
地震保険の利用を伴う大きな損害が発生した場合は、片付ける前に写真を撮っておきましょう。片付けてしまうと正確な状況を伝えづらくなり、損害が認められない可能性もあります。写真を撮る際は、建物の全体写真と損害箇所の拡大写真を用意しましょう。
家財への地震保険の査定におけるポイント
家財においても地震保険の査定にはポイントがあります。家財の査定におけるポイントは以下のとおりです。
片づける前の写真を用意する
家財の損害をしっかり主張して保険金を請求するため、被害を受けた最初の段階で、家財が転倒・落下している状況や、家財の壊れた部分の写真を撮っておきましょう。片付けてしまうと、地震による被害の状況が分かりにくくなるため、査定に影響が出てしまう可能性もあります。
生活用動産以外は保険の対象にならない
地震保険の対象となる家財は、生活するのに必要な家財である生活用動産のみです。以下のようなものは、地震保険においては家財とはみなされません。
・金銭や通帳、金銭価値のある物(有価証券・切手・はがき・印紙)
・自動車やバイク(排気量125cc以下の原動機付き自転車は除く)
・貴金属・宝石などで1つの単価が30万円を超えるもの
・帳簿・証書・設計書などの部類に属するもの
地震保険の査定が不満な場合の対処法
地震保険を利用する際の査定が不十分と感じる場合、以下の対処を行いましょう。
追加で資料を提出する
査定が不満な場合は、追加資料を提出しましょう。ただし、地震保険の補償対象となることを証明する必要があります。たとえば、被害を受ける前の写真を用いて、経年劣化ではなく災害による被害であると証明できれば、補償対象として認定されやすくなります。
鑑定人を変更してもらう
査定は、鑑定人によって変わる可能性があります。鑑定人は基本的に客観的かつ公平に確認しますが、査定ポイントの違いや見落としが絶対にない訳ではないため、納得のいかない場合は鑑定人の変更を要請してみましょう。
保険会社に相談する
保険会社の担当者によって査定の基準や対応が異なる可能性もあるため、保険会社そのものに相談するのも対処法の1つです。この際、事故受付の窓口ではなくお客様センターに相談すると、取り合ってもらいやすいでしょう。
そんぽADRセンターに相談する
査定の状況に不満がある場合、そんぽADRセンターに相談できます。日本損害保険協会のそんぽADRセンターは、地震保険を含む損害保険全体を管轄する団体です。損害保険会社とのトラブル・争いの解決をサポートしてくれます。利用は原則無料で、仮に査定結果に不正があった場合にも対応しやすい点がメリットです。
まとめ
地震保険の利用を申請する際は、建物と家財を別々に査定してもらうこととなります。それぞれ審査基準が決められているため、審査が適正に行われるように写真を撮っておきましょう。
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